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​前田崇治

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ベンガラを使って染めた和紙

ー何故New LeaveSに協力してくださったのか?

「一つは、和紙を使うことがないであろう学生の方達と交流して、どんな紙に興味があるのかがわかればいいなと思ったことです。

 うちでその情報をフィードバックして商品のアイデアになれば良いなと思った。あとは学生さんなので一緒に協力してできたらなと、お互いに良い方向に向かうのではないかと思い参加しました。」

ー学生と自分の視点が違うと思った点

「商品を考えるという点で僕たちが考えないような商品を提案してくれた時です。逆に、自分がワークショップでお花を作ると言った時にやってみたいと言ってくれたのでそれはとても嬉しかったです。自分が考える良いなと思うものを若い人にも良いと思ってもらえるのは嬉しいです。

だって20歳も違うし。ずっと自分たちも同じことをやっていくだけだったら良いものって生まれないです。なので、それぞれの年代の人の良いもの、良いと思ってくれるものを探す。それが仕事だと思っています。」

ー地場産業、和紙産業に対してどういったお考えをお持ちですか?

「正直うちは、代々和紙をやっている家系ではないので、和紙業界の深いところまで考えてるかというとそうではありません。

今は和紙以外の代用品が多くあり別に和紙でないといけないという所が減った事も事実です。だから紙漉思考室では和紙を使わない人たちに如何に使ってもらうか、家の中に、空間の中に、どう入れてもらうかっていうのを考えてやっています。」

「そして地場産業に関してうちは、今回10年ぐらい前からここで紙漉きをやっているんですけど、小学校の賞状作りとか、あと唐津くんちの曳山を修復する時に使う和紙に使えないかという問い合わせももらっていて、そういうのをずっとやっていたら、後々地場産業として、成り立つような感じがしています。」

「うちとしては伝統的なものかそうでないものを主体にするかというのは特になく、基本的にはできるものであればなんでもするスタンスです。唐津くんちの曳山は自分も小さい頃に引いていました。一番曳山の赤獅子は今年で200年。曳山は傷んでくると修理しています。

修復する時に漆を剥いで和紙の部分の所が傷んでいると貼り替えるそうです。」

「自分は修復の仕事に一番大切な事を高知で紙の勉強している時に学びました。修復される部分の紙はその時代の製法、同じ種類の原料でする事。紙に負担がかからないようにする事。今は修復の紙は手掛けていませんが高知で教えて頂いた事を今の紙作りでも生かしております。七山に帰ってきた時に九州国立博物館の方から修復の紙の製作のお誘いを頂きましたが自分は普段の生活空間に紙が使われる事を願って仕事をしているのでお断りしました。しかし唐津くんちの曳山の修復の紙は別です。地元の大切な物に使って頂ければ大変嬉しく思います。そして今、子供達が曳山を曳いているのですが父親の紙が修復の際に使われていると言ったら喜ぶと思いますし。」

ー同じ紙を作り続けることに対して

 

「紙には色んな種類の紙があります。表具の紙、建材の紙、書道用の紙等々。紙漉き思考室は紙と言う素材を提供する所なのでお客様が求めていらっしゃる紙を作ります。なので必然的に色んな紙を作ります。」

 

「八女の和紙は地場産業で有名で生産能力は紙漉思考室と比べ物になりません。

例えば自分が原料10キロ煮るところあちらのお釜は100キロ程煮れるお釜です。しかし自分が独立する時に八女に挨拶行った時に

「今からは大量生産ではなく少ない量で丁寧な紙を作った方がいいよ」と言われました。その時に小回りが利くオーダーをうける紙漉きになろうと思いました。

ー和紙を受け継いでいこうという思いはあるのですか?

 

「和紙を漉くための道具を作る人がまず少ないです。なので正直今後が心配です。道具の問題などを考えると別に現時点では子供に継いでもらいたいとは思っておりません。本気でやりたいと言ってきた場合は考えます。その時は高知の先生に預けようと思います。理想は和紙を作る人よりも和紙を使う職種についてくれたら嬉しいなあと思います。例えば料理人になったら空間で和紙を使用したりなどあとは建築関係だったり。将来違う形で一緒にできたらなと思います。」

ー手漉き和紙の魅力を教えてください

 

「紙には色んな魅力がありますそれを一番初めに気付かせてくれたのは植物からこんなきれいな紙が出来るのかと感動した時です。例えばその紙を色んな方に渡して使い方を考えてもらいます。同じ紙でも使う人によって見え方が変わります。

素材なので使う人によって良くもなるし悪くもなる。自分がハッとするような使い方をして頂いた時が紙が喜んでおりまた紙の魅力が増えていきます。」

ーどうして七山に?

 

「一番は、小さい時から七山に行き来しており知り合いが多かったことです。それと父が古民家を購入してそこで和紙を作り始めました。父が漉いているのを見てる時は興味が湧きませんでしたが大学生のとき自分は写真学科で、それで和紙に写真を転写するという事を卒業製作にしました。しかし結果は失敗してそれから紙に興味持ちました。卒業後高知での勉強期間を終えて水が豊富な七山を選びました。」

ー楮は七山のものを使っているんですか?

 

「紙漉思考室では漉く紙、金額によって原料を変えております。

国産であれば七山の自生している楮、高知の土佐楮、三椏等々。外国産は中国の楮。

七山の自生している楮は真っ白い綺麗な紙は難しいです。どちらかと言うとスジの入った荒々しい紙になります。その様な紙で良ければ使うときもあります。ただ大事なのは原料よりもどのような工程で紙が作られたかと言う事です。繊維に無理をさせないやさしい紙の原料作りが良い紙の秘訣だと思います。」

ー紙の色について

 

本来紙漉思考室では墨、柿渋等以外では紙を染める事はしないようにしておりました。

出来るだけ原料本来の色を楽しんでもらおうと思っておりました。それは染色をする事により紙の繊維に少なからず負担がかかるからです。

そして年月が経てば色あせもおこります。

しかし、ここ数年前よりベンガラでは染めております。第二酸化鉄を主成分とした自然でエコな染料です。

色あせも少ないです。このベンガラを使って紙を染めて漉いております。

ーどうやって和紙の良さを伝えているのか

 

「独立当初最初は紙の営業に行っていましたが全く相手の心に響きませんでした。それで紙を要らない人に勧めるよりも紙に少しでも興味を持ってくれる人と繋がるか考えました。ただの白い紙に見える紙でもどのような工程を踏んでなぜこのような紙になったか説明する事でお客様に興味を持って頂けます。

 

紙を強くするためにこんにゃく加工をします。何も分からない方がこんにゃく加工と聞いても分からないと思いますので丁寧に説明します。

 

確かにこんにゃく加工よりも化学的にもっと強く出来ますが自然の物でこんなに出来ると説明すると皆さん興味を持って頂けます。そんなお話をしながら和紙の良さ

を伝えていっております。そして運よく自分が紙の事で路頭で迷っている時にデザイナーの前崎成一さんとお会いしました。その縁の始まりで色んな方に紙に興味を持っ

て頂きました。良い出会いがあり使い方等を日々勉強していく事で自分の引き出しが増えてまた和紙の良さを提案出来ていると思います。

ー最後に今チャレンジしていることを教えてください

紙を普段使わない方にどのように使って頂けるか常々考えながら紙を作っています。

また生活空間の中の一部に紙漉思考室の和紙がさりげなく入り込めたらと思います。

大切な事は紙作りの基本は変えないで和紙と言う素材を今後とも皆様に使って頂けるように提案したいと思います。

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